週末FPのRiki × お金・育児・医療のお話

平日はサラリーマン、週末はファイナンシャルプランナー。お金・育児・医療のネタを中心にお話したいと思います。少しでもためになれば幸いです。

妊娠・出産・育児が退職事由でも”会社都合退職”として失業保険がもらえる

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我が家は共働き世帯です。

妻は育児休業中で復職時期が近付いているのですが、通勤・育児・職場環境などの様々な問題があり、復職をためらっています。

我が家と同様に、出産や育児を理由に退職を検討されている方も多いと思います。

そして退職した場合、失業保険を受給することになるでしょう。

 

その場合、”自己都合退職”ではなく”会社都合退職”としてしっかり失業保険を受給できる方法があるのです。

今回は失業保険についてご紹介します。

 

失業保険の対象者

まず、失業保険を受給できる対象者ですが、下記の1、2いずれかに該当する場合となります。

  1. 働ける状態で就職しようとする意志があること
  2. 離職日以前2年間に、被保険者期間(※)が通算して12か月以上あること。(リストラや倒産など会社都合で退職する場合は、離職日以前1年間に被保険者期間が6か月以上あること)

※被保険者期間とは、雇用保険の被保険者であった期間を1か月ごとに区切り、それぞれの期間の中で労働した日数が11日以上ある月を被保険者期間1か月とします。

 

ただし、離職日以前2年間に、病気や怪我、出産、育児などの理由で、30日以上賃金の支払いを受けることができなかった場合、その期間を最大4年間まで遡ることができます。

出産や育児で休業していた場合、離職日以前4年間において被保険者期間が12か月以上あればよいということになります。

 

”会社都合退職”と”自己都合退職”の違い

失業保険を受給する場合、”自己都合で辞めた場合”と”会社都合で辞めた場合”では、給付日数や給付開始時期の点で、”会社都合退職”の方が優遇されることはご存知の方も多いと思います。

簡単に説明しますと、自己都合退職と会社都合退職では支給日数が以下のように異なります。

  • 自己都合で退職した場合

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 なお、自己都合退職の場合は3ヵ月の給付制限期間があるため、退職後すぐに受け取れるわけではありません。

  • 会社都合で退職した場合

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上記の表から分かるように自己都合退職と会社都合退職では支給期間にかなりの違いがあります。

また、失業保険の受給中に国民健康保険(※1)に加入される方もいらっしゃると思います。

会社都合退職であれば、国民健康保険料が減額される(※2)点も大きな違いです。

※1 失業保険による収入が年130万円以上の場合、扶養には入れませんので国民健康保険に加入することとなります。逆に130万円未満であれば扶養に入れます。

※2 詳しい金額は各市町村にお問い合わせください。

 

妊娠・出産・育児を理由に退職した場合は自己都合?会社都合?

前置きが長くなってしまいました。

恐らくこの記事を読まれている方が一番知りたい事はこれかと思います。

 

基本的に、育児に専念するために退職をされた方は”自己都合退職”となります。

ただし、次の場合は”会社都合退職”として扱われることになります。

「妊娠・出産・育児を理由に退職 + 受給期間延長」

妊娠や出産、育児が主な理由で退職をするが、失業保険の受給期間の延長申請をすることで「特定理由離職者」となり、会社都合退職と同様の失業保険が受給できます。

実は、失業保険の受給資格者は、一般の受給資格者(自己都合退職者)、特定受給資格者(倒産や解雇で退職を余儀なくされた会社都合退職者)に加えて、特定理由離職者という区分が存在します。

これは会社都合退職となった特定受給資格者には該当しないが、やむをえない「特定の理由」のために自ら退職をせざるとえなかった人のことを指します。

つまり、やむをえない事情で会社を辞めたのだから、会社都合退職と同じ扱いにしてあげようという措置です。

ちなみに、厚生労働省のHP上では特定の理由について以下のように説明されています。(一部抜粋)

  1. 病気、ケガ、体力の不足、心身の障害、視力・聴力・触覚などの減退により、業務をすることが不可能または困難となった
  2. 妊娠・出産・育児などにより離職し、かつ基本手当(=失業保険)の「受給期間延長」措置を受けた
  3. 家族の看護など家庭の事情が急変した
  4. 転勤、会社の移転、結婚による住所変更、育児のための保育施設利用、鉄道・バスなどの廃止などの理由で、通勤不可能あるいは困難になった

上記の2番がまさに妊娠・出産・育児で退職を検討されている方に注目いただきたいポイントです。

出産や育児を理由に退職するのは自己都合となりますが、受給期間の延長措置を受けることで”特定理由離職者”となり、会社都合退職者と同等の扱いを受けられます。

受給期間の延長措置とは 

失業保険の受給期間は原則、離職日から1年間で、1年以内に消化できなかった給付日数は無駄になります。

しかし、妊娠や出産・育児を理由に退職された方は、すぐに働くことができず、期間内に失業保険を貰うことが難しいこともあります。

しばらくは育児に専念して、「落ち着いたら仕事を探そう」という方もおられると思います。

そこで、失業保険の有効期限切れを防ぐ救済措置として、申請をすれば、失業保険の受給期間を最大で4年間まで延長できる制度があるのです。

受給期間延長の注意点

延長措置を受けるにあたっていくつか注意点があります。

■ 延長申請の手続きは、退職後31日以降1ヶ月以内に行うこと

延長の申請手続きができる期間は、離職日の翌日から起算して31日目以降、1ヶ月以内と決まっていますので、必ずこの期間内に申請をしてください。

2019年3月31日に離職した場合、5月1日~5月31日の間に申請が必要となります。

■ 最大延長期間の4年以内に消化できるように、ハローワークで「求職申し込みと受給資格の決定」の手続きを行うこと

4年以内に消化できなかった失業保険は失効しますので、逆算して4年以内に貰えるように申請してください。

 

出産や妊娠、子育てを理由に離職される方の多くは「自分は自己都合退職」と思っているでしょう。

しかし、ご紹介したように特定理由離職者のような救済制度が実は用意されているのです。

自己都合退職と会社都合退職とでは待遇面で大きな違いがあります。

損をしないように、該当する方はぜひ調べてみてください。

 

Riki