週末FPのRiki × お金・育児・医療のお話

平日はサラリーマン、週末はファイナンシャルプランナー。お金・育児・医療のネタを中心にお話したいと思います。少しでもためになれば幸いです。

5分で分かる幼児教育・保育無償化のポイント

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幼児教育・保育無償化とは

ご存知の方も多いかと思いますが、2019年10月から幼児教育・保育無償化を全面的に実施する方針が政府にて固められました。

概要としては、幼稚園・保育所認定こども園を利用する3~5歳児のすべての子供たちの保育料を無償化(※1)、また0~2歳児の子供たちの保育料については、住民税非課税世帯を対象として無償化となります。

(※1)後ほど説明しますが、すべての子供たちが完全に無償となるわけではありません。

無償化という大きなメリットがあることは分かりますが、みなさんにとってどのような恩恵があるのか、今の制度と何が変わるのか、きちんと理解できていない方も多いのではないでしょうか?

本日は幼児教育・保育無償化によるメリット、またそれによって生じる問題についてポイントを絞ってお話したいと思います。

 

無償化は消費税率UPによる子育て世帯の消費減退に対する経済支援のひとつ

 「幼児教育・保育無償化」は、2017年12月に閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」にて取り上げられた政策のひとつで、消費税率引き上げの2019年10月1日からの実施を目指すことになっています。実施に向けて、具体的な手続き等について現在検討が進められているところです。

当初は2019年4月から5歳児のみを対象に無償化し、2020年度から全体に広げる予定でしたが、消費増税によって子育て世帯の消費が減退することを危惧し、2019年10月1日から全面実施に前倒しを決定しました。

消費税率10%の影響

消費税率が10%になるということは、10万円の物を買うと消費税として1万円を支払うという事です。1万円あれば色々な物が買えますし、いい食事だってできますよね。増税が家計に与えるインパクトは見えにくいのですが、年間でトータルすると家計の支出が数万円~数十万円増えることになります。

消費税率引き上げと同時に実施される幼児教育・保育無償化は、子育て世帯にとって非常に助かる経済支援であることが伺えます。

 

世帯によって無償化のプランは異なる

冒頭でも少し述べましたが、無償化といっても全ての世帯が完全無償になるわけではありません。具体的には下記のようにプランが分かれる予定です。

  •  共働き家庭、シングルで働いている家庭

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  • 専業主婦(夫)家庭

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※0~2歳児の子供たちの利用料は、住民税非課税世帯を対象に4.2万円/月 まで補助されます。

住民税非課税世帯について

0~2歳児を保育園に預けておられる方もいらっしゃると思います。そこで、「我が家は 住民税非課税世帯に該当するのか?」という疑問を抱かれる方のために、極シンプルに住民税非課税世帯について説明させていただきます。本題ではありませんので必要ない方は読み飛ばしてください。

 

まず、住民税非課税の基準ですが、下記のような計算式で算定されます。

所得金額 ≦ 35万円 × 世帯人数 + 加算額(※)

(※)加算額はお住まいの地域によって異なります。一級地(東京23区、指定都市)は21万円、二級地(県庁所在地、一部の市町)は18.9万円、三級地(一般市町村)は16.8万円

 この基準に照らし合わせると、

  • (例1)一級地に住む会社員、専業主婦、子供一人の3人世帯の場合・・年収205万円以下で非課税世帯
  1. まず、この世帯の住民税非課税の基準値を上述の算定式を用いて計算すると、35万円 × 3人 + 21万円 = 126万円となります。
  2. 年収205万円の場合、給与所得控除が79.5万円となりますので、それを差し引くと所得は125.5万円となり、ギリギリ基準値以内に収まります。
  3. 例1の世帯においては年収205万円以下であれば、住民税非課税世帯に該当します。

 

  • (例2)一級地に住む会社員、専業主婦、子供二人の4人世帯の場合・・年収255万円以下で非課税世帯
  1.  同様に、この世帯の住民税非課税の基準値を上述の算定式を用いて計算すると、35万円 × 4人 + 21万円 = 161万円となります。
  2. 年収255万円の場合、給与所得控除が94.5万円となりますので、それを差し引くと所得は160.5万円となり、基準値以内に収まります。
  3. 例2の世帯においては年収255万円以下であれば、住民税非課税世帯に該当します。

気になる方は、お住いの地域の基準を確かめて基準額を計算してください。

まとめ 

施策の中身を見ていくと少し複雑に思えるかもしれませんが、ポイントとしては、幼稚園、保育所認定こども園を利用する3~5歳児すべての子供たちの利用料が無償化(一部上限あり)ということです。ただし、別途実費で徴収される園児の通園送迎日や食費、行事費といった諸費用は無償化の対象とはなりませんので、引き続き負担することになります。

無償化の一方で問題も

私自身、二児の父であり、無償化は非常に嬉しいことです。ただし、無償化によって、保育のニーズが増え、待機児童の問題が加速するリスクもあります。また、保育士の人材不足も問題になっており、このまま児童数が増えれば保育や教育の質が低下するリスクもあります。

特に保育士の人材不足は深刻な問題です。我が家の長男は現在幼稚園に通っておりますが、幼稚園に入園するまでは保育園に通っていました。その保育園でも保育士の数が十分であるとは言えず、子供たちにしっかり目が行き届いているとは言い難い状況でした。

例えば、お迎えに行ったときに、保育士の先生が子供の今日一日の言動をノートに記入してくれるのですが、これが書けていないこともしばしばでしたし、子供が洋服を前後ろ反対に来ているのに、お迎えの時間までそのまんまだったりという事もよくありました。しかし、これは保育園や保育士が悪いのではなく、保育士の処遇改善であったり、保育士になりたいと思えるような施策を先送りにしてきた政府に一因があると思います。

無償化によって保育ニーズが増えても、肝心の施設がない、保育士がいない、ということでは本末転倒。大切な子供を預けるのに、保育士が不足している、十分に目が行き届かない、ということでは保護者としても心配です。

また、保護者にとっても不公平感が高まる可能性があります。競争率の高い認可保育園に落選した場合、仕方なく認可外の保育園に子供を預けることもあろうかと思います。その場合、無償化の上限は3.7万円/月となり、不足分は負担を強いられることとなります。無償化による保育ニーズの高まりによって、第一希望の認可保育園に入れなかっただけでなく、金銭面でも負担を強いられるとなると、当然不公平感が募ります。

 

個人的な見解ですが、幼児教育・保育利用料は現状のまま据え置きがよいかと思います。その代わり、所得や子供の人数に応じて児童手当を増やすなどすれば、消費税率引き上げに対応することも可能です。それと同時に、保育士の処遇改善や人材の整備を進め、一定の進捗・効果が見られた段階で初めて無償化を検討すべきだと思います。

このまま幼児教育・保育無償化が先走りしても、待機児童問題の解決は遠のくばかりかもしれません。

 

Riki